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Yama_Blog

デザイン学科絵画コースを題材としたブログです。山口先生の考え方やスクーリングの様子などを掲載しています。

2010年12月3日
誰もが「塗り絵」というものをしたことがあると思う。線描だけで印刷された漫画のキャラクターなどに色を塗っていくもの。多くの方のイメージとしてある絵の描き方というのもこの延長線上にある。まず鉛筆できっちりとカタチを描き出しておいて、絵具でそれに着色していく方法。こうした描き方は誰もが経験し馴染み深い描き方、イメージしやすい描き方。しかし当たり前のようなこうした描き方は、実はとても難しい描き方なのである。

何故難かしいのか。この描き方では、制作の早い段階で正しいカタチの描写をして終えてしまわなければならない。それを終えなければ着色の段階に入っていくことができないのである。 ところが、人間が、対象の正しいカタチを了解し、描くというのはそんなに簡単なことではない。写真がシャッターボタンひとつで対象を正確に写し取るのとはわけが違う。観察すること観察して描くこと、この繰り返しの中でだんだんと正しいカタチや正しい位置関係、正しい明暗がわかってくるのである。

これは絵をほとんど描いたことのない人にはわかりにくい感覚かも知れない。「見えたものをそのまま画面に写すだけのことではないか」と思うだろう。これについてここで説明すると長くなるので割愛する。対象を観察して描く、という経験を一度でもしてもらえばそんな簡単なことではないことが理解していただけると思う。

絵を制作するとは着手してから完成させる最後の最後まで、疑問を持ちながら観察しそして気づき、発見することの連続なのだ。こうした心のプロセスに応じた絵画制作の在り方は「塗り絵」とかその延長にあるような描き方ではないのである。ではどのような描き方なのか。

「最初からどう描いていいかなんて全部わかるわけじゃないから、例えば大まかなカタチとか位置関係とかわかったことから描いていけばいいんだよ。描きながらだんだんわかっていくんだから、わかったらその時に描けばいいんだから…」

「 間違いっちゃいけないなんて考えないこと。間違えることが大切。何もないところに正しいものを描くことなんてできない。間違った時にその、その間違いを基準にすることで正しい在り方が具体的にわかってくるのだ」

「間違っちゃいけないなんて考えないこと。間違うっていうのはイメージした進め方や状態と違ってしまうこと、でもそうすることでイメージしていなかった目新しいものとの出会いがある。旅といっしょで全て予定通りだと問題もないかわりにドキドキもない」

「間違っちゃいけないなんて考えないこと。 例えばきれいな絵を描きたいと思ったしまったのに汚い色彩になってしまったとする。でも、汚くなってしまった時こそ、きれいなものを求める気持ちがより強くなってくるもの。強い気持、強い想いで向かうことで絵も強くなる」

人間はやっぱり実際に活動してみていろんなことがわかってくる。いろんなことがわかるためには失敗も含め試行錯誤が必要、大切だということ。これは実は絵画制作だけの話ではない。動画で紹介している制作のプロセスについてはまだまだお伝えしたいことがあるが、今回はとりあえず、こうしたことを念頭に改めて動画を鑑賞してみてもらいたい。ここで述べたような心のプロセスが制作の進め方の様子として感じられるのではないだろうか。


2010年11月29日
ご紹介しているように、学生による絵画の作品制作のプロセスを動画にしてYouTubeにアップしている。ご覧いただいたとおり、それぞれの学生がそれぞれの描き方で作品を制作している。静物画も毎回同じようなモチーフを用意しているが、同じようなモチーフを描いても、学生個々に制作の進め方は異なり、結果としてそれぞれの個性が感じられる作品になっている。絵画の制作プロセスには「このように進めなければならない」などというひとつの方法論があるわけではない。その人の考え方や感じ方の違い、得手不得手、過去の経験などその人その人によって、しっくりくる描き方、納得できる描き方は違ってくる。ひとつの正解がない絵画の制作方法。では絵画の指導者は何を教えれば良いのか、どのような指導をすれば良いのか。

YouTubeでこんな動画を見た。インストラクターが風景がの描き方を教える動画なのだが、実際の風景を観察しながら描くわけではない。「先ず空を描きましょう。○色と○色の絵具をパレットで混ぜ、○インチ幅の刷毛をこういうふうに使って塗っていきましょう。では次に遠景の樹木を描きます。○色と○色の絵具をパレットで混ぜて○インチ幅の筆をこういう使い方をして…」という指導が続く。30分なのか1時間なのかわからないが、こうやってひとつの番組の中でひとつの風景画が完成していく。つまりこの番組における絵画の指導とは、絵具の選択、道具の選択、使い方を示し「私がやっているのと同じようにやりなさい」というものである。作品は真っ白な状態から完成まで、まるで工業製品のように効率的に最短距離で進んでいく。そこには疑問を持ったり、その疑問を解決したり、失敗したりそれを修正したり、挑戦したり発見したり、といった精神的なプロセスが全くない。そういう経験をするから絵画制作には深い面白みがあるのだし、そういうプロセスを経て生まれた作品だから深い味わいを持つはずなのに。個性ややりがい、手応えも全てそこから生まれてくる。

こうしたものと私が大学で行っている絵画指導を比べて云々するわけではない。それぞれの指導法のニーズや役割が違うのである。否定するものではない。ここでそうした指導を例示したのは、私の指導方針がそうしたものの真逆であるということをより理解してもらうための対比としてである。例示した指導法は「ひとつのやり方」を伝えたに過ぎない。

私が絵画制作指導で大切にしているもの。それは先ほど述べた「そこには疑問を持ったり、その疑問を解決したり、失敗したりそれを修正したり、挑戦したり発見したり、といった精神的なプロセス」ということである。けっして単なる精神論ではない。こうしたいわば「眼に見えない」精神的なプロセスが、「眼に見える」具体的な制作の活動として現れる絵画制作のプロセスの在り方、そしてそのプロセスで使われる技術、考え方、知識の使い方がある。ひとそれぞれ感じ方や考え方が異なれば自ずとプロセスや、使用する技術は異なってくる。だから先ず指導者は受講生の活動の様子をとにかく見るということ、そして話をするということ、そこからその受講生に応じた指導内容を決めていくのである。ただそうは言うものの授業の限られた時間の中でそれが完全にできるわけではない。ある一定の制作の方法は与えていくこととなる。問題はその与え方。なぜその方法なのか、その根底にある考え方を説明しながら示す。これが大切。制作している人の心が描きながらどう変化していくのかを踏まえた描き方だということ。

改めて動画を見てほしい。他では全く指導しない描き方だとか本学でしか指導しない描き方だとは言わない。しかし、本格的に絵画を学習したことのない方々にとっては馴染みのない描き方、そしてなんでそのような描き方をするのかが、動画を見るだけではわかりにくいものであろう。 しかしこれから説明するように、そのように絵画を本格的にならったことのない方々のための制作方法なのである。


2010年11月28日
YOU TUBE に動画を投稿しました。静物油彩画制作のプロセスです。
静物画制作プロセス(油彩画).mov


2010年11月9日
静物着彩画制作プロセス(アクリル画)2.mov

静物木炭デッサン制作プロセス
静物着彩画制作プロセス(アクリル画).mov

構想画制作プロセス(油彩画).mov
の4本の動画をアップしました。タイトルをクリックすると動画にアクセスできます。

この中で「静物着彩画制作プロセス(アクリル画)2.mov」

に添えた解説をここに掲載しますので、動画視聴にあたって参考にしてください。

アクリル絵具による静物着彩画制作のプロセスです。これを描いた学生はアクリル絵具を

­使うのも、静物画を描くのもはじめての体験とのこと。絵が好きな反面、うまく描けない­ことにコンプレックスも持っていたそうです。「絵画を上手に描く」というひとつの才能­があるわけではありません。絵を描くことはいくつかの能力の総体です。個々の能力を効­果的に引き出すために、絵画制作を段階的に考えそれぞれの段階での課題を明確にしてい­きます。絵画とは作者の想いを積み重ねながら描かれていくもの、良い絵画とは作者の想­いをその造形に十全に託された絵画です。どんな想いを積み上げていくのか、それを見定­めることができなければ絵画に想いを託していくことはできません。段階ごとにとりくむ­ひとつひとつの課題が作者の想いを引き出し、導いていくのです。
カタチに対するイメージ、色彩に対するイメージ、質感に対するイメージ。作品を制作し­ていく上で必要なこうした様々な造形的なイメージは最初からはっきりととらえられるも­のではありません。観察し描いている中でだんだんとはっきりしてくるものです。制作プ­ロセスもそうした意識の流れに応じて、描き始めから完成に向け、大まかな描写からだん­だんと細かい描写へ、暗い漠然とした調子から明るいメリハリのある表現へと向かうよう­に描いていきます。途中の段階ではプロセスの中で得た気づきをすぐに反映したり、間違­いを修正したりできるようにすることが大切ですので、あまり早い段階から細かいところ­にとらわれたりしないよう注意していきます。むしろ積極的に間違いと修正を行うように­することで表現は正確さを増し、イメージは強くなり、絵具の表情は豊かになっていくの­です。
段階的に施された彩色、いくつもの絵具の重層により豊かで味わい深い表情、パレット上­での混色では出すことのできない色彩を表現することができます。また重ねられるのは色­彩だけではありません。水の溶き具合、筆の種類、筆の使い方によって様々に変化するタ­ッチも重なり複雑でデリケートな風合いとなります。
素描の段階では、かなり綿密に測量しながらデッサンを行っています。絵画学習の初期の­段階ではこうした測量に基づいた描きかたを経験しておくことはとても大切です。一度で­もこれを経験すると、造形の関係やバランスを見る力と意識が身に付きます。この力は単­に写実的な絵画に必要となるだけでなく、抽象的な表現においてもカタチや色彩を構成す­る時にも発揮されるべき力です。




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